旅の途中で出会う日本酒は、その土地の食べ物と相性がよく造られている気がします。その場でしか感じることのできないタイミングや、味わい方があるからこそ旅は楽しいものですよね。
秋田から岩手の三陸側を南下し、宮城県は登米市に入りました。道中、テレビでも地名を聞くことの多かった陸前高田や大船渡を通過する際には、色々な感情が芽生えたのも事実です。
海岸沿いには、被災時の姿がそのまま残されているような建物も見かけました。また、新たな環境づくりを行っている場所もありましたので、復興の芽吹きが育つことを心から望んでおります。
生きている故の辛さや亡くなられた方の思いなど、体験していない者が口にするのも憚るような複雑な思いを感じます。個人ができることは少ないけれど、被害に遭われた方達の努力や前向きな気持ちが少しでも報われるよう祈っております。
今現在、土地の物をいただける喜びや有難さを痛感しながら、ふらりと立ち寄った道の駅で地元の日本酒を入手しました!
宮城県登米市の石越醸造株式会社の特別純米酒 澤乃泉が今宵の一本です。精米歩合:55% アルコール分:15度。
宮城県といえば仙台名物の牛タンですよね。厚みのあるジューシーな食べ応えは、なかなか味わえない魅力があります。メニューをガン見すること数十分。あまり食べる機会のないゆでタンを今宵のアテにいたします!
宿に併設の牛タン屋さんがある、えびたけ旅館のお部屋で一人酒盛りを楽しんでしまいます。
まずは常温をひと口。酸と甘み、重さと軽さが複雑に絡み合う不思議な感覚が味わえます。呑み進めると美味しい甘みのあるお水を味わっているような軽快さもあらわれ、とりあえず盃が進んでしまうマジックがありました笑。
ゆでタンと合わせてみると、牛の旨味だけを引き出しつつ、純米酒の余韻を残してくれます。とにかく牛タンが柔らかい!わさび醤油でいただきましたが、柔らかさにびっくりするばかりです。
えぇ、ぬる燗も外せません。複雑さが取れてすぅっと綺麗な味わいが染み込んでくるような感じを受けます。ゆでタンの独特な風味をさらっと流してくれるうえに、やはり相性は抜群だよねっという楽しい時間を頂戴しました。
ちなみに今でこそ仙台ならば牛タンとなったそもそもの始まりは、戦後の混乱期を駆け抜けた和食職人の情熱から生み出されたのです。
誰にも真似できない料理を追求し、仙台牛タンの特徴でもある厚切りで柔らかくなる調理技術を編み出したんですね。職人としての魂がこもった牛タンの有難さを知ることができた旅と相成りました。
旅館の方たちの温かい人柄を感じ、美味しい牛タンをいただき、その場で出会った日本酒が呑める。
疲れた身体に染み渡る旅の思い出となりました。
今日も美味しかったです!ご馳走様でした。
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