日本酒を酒器であそぶ楽しさ。

遊び方

私が日本酒を呑み始めたころ、どんな器で呑んでもどれも一緒だと思っていました。

ただ、家にある父親のぐい飲みを借りてるだけでは物足りなくなり、段々自分の好みのおちょことかが欲しくて、旅行へ行った先などで買い集めるようになりました。

家で、毎回その日のお気に入りを選びながら、日本酒を楽しんでいたのですが、ある時気づきました。

「味が違う」「なぜ・・・。」

同じ日本酒を、同じ温度で呑んでいるのに感じ方が違うのです。

というわけで、その謎を説くべく、奥の深い日本酒と酒器の関係をお伝えしようと思います。

日本酒と気分に合わせて選ぶ酒器。

全国にそれぞれの日本酒があるように、酒器にもそれぞれの土地の個性、作家さんの個性、また素材の個性など、魅力がふんだんに詰まっています。

酒器を使い分けて、毎日の日本酒を楽しめるのは、酒呑み人として、もうワンランク上がれるような気分になっちゃいます。最高ですね!

ガラス

    

ガラスといえば、切子やワイングラス、他にはうすはりグラスなどもよく聞きますね。ワイングラスは最近、日本酒を呑むのに定番化してきているように思います。

その理由は、大吟醸や吟醸酒のフルーツのような香りを十分に楽しめることにあるようです。その為か、テイスティングなどにも使用されることがあります。

ガラスを活かしたシュチュエーション。

ただ、古風な考えの私としては、江戸切子や琉球ガラスなどの小ぶりサイズで、日本酒をちびちびいただくことに風情を感じてしまうので、場面に応じて使い分けたいところです。

ガラスは、香りを楽しみ、もっとも酸味や甘みを感じるのに適した酒器といわれています。そして、夏の涼しげな印象と冷酒をいただくときの清涼感を演出してくれるので、ザ・夏のイメージで日本酒とおつまみを選ぶのも楽しくなっちゃいます。もちろん、手持ちのアイテムには入れておきたいですよね。

やきもの

磁器や陶器の事ですね。日本酒を呑むとなるととてもオーソドックスであり、一家に一つは食器棚に入っていそうな定番ですよね。

有名なところでは、備前焼、瀬戸焼、九谷焼や有田焼など、一度は耳にしたことはあるでしょうし、某お宝TV番組などでは高いものから安いものまで見る機会がありますね。

やきものの特徴としては、陶器は熱しにくく冷めにくい特性があり、酒質をまろやかに感じさせます。また、磁器はイメージとして日本酒の味をスッキリさせてくれそうなのですが、実は硬質のため酒の味を変えづらいといわれています。

やきものと日本酒の相性。

それぞれの土地のやきものの個性で、日本酒とおつまみの演出も変わってきます。手の仕草が残るような土物感のある酒器なら、ガツンと重めの山廃系の日本酒に合わせるとか、美しい絵柄の磁器に合わせるなら、香りも華やかでスッキリきれいな純米吟醸を合わせてみるとか、遊び方は無限大です。

酒器の中では、もっとも土地柄の個性が強く、種類も多いので、その土地の日本酒に合わせて選ぶのもすごく楽しいですよね。その子を使う度に、その時を思い出したりして、記憶のアルバムにも使えちゃいますね。

杉や檜、桜の皮、竹などの素材違いや、漆器もありますよね。初めて酒器を買うときに、一番初めの選択肢にするのは難しいかもしれませんが、とても独特の楽しみ方が出来ます。

私は杉と桜の皮と竹を持っているのですが、器からやんわりと素材の香りがします。なので、日本酒を入れるとどうなるんだろう?と興味津々だったのですが、いざ試してみると面白いんです。

木の酒器を使って味が変わる楽しさ。

大吟醸や吟醸酒などの香りが華やかでやさしい味わいの日本酒は、しっかりと杉なら杉の香りと味わいが出てきて、樽酒のような美味しさになります。これはこれで、変化した日本酒の雰囲気を楽しむことができます。

そして、山廃や古酒など熟成された色や香りのついたお酒を注ぐと、なんと中和されたように、日本酒の強めの個性がやさしくなるのです。

また、杉の木の特性は熱伝導率が低いため、他のガラスなどの酒器よりも高い保温効果があります。そして、手の温度が伝わりにくく、結露もほとんど起こさないため、注ぎたての日本酒の温度をそのままに、じっくり時間をかけて楽しみたい方におすすめです。

木の酒器は、目の前の日本酒の味の変化を楽しみたい時や、味噌田楽や糠漬けなど発酵ものの強めのアクセントがあるお料理で、和の雰囲気を味わいたい時にぜひ試して欲しいです。あっ、枡を使ってみるのも楽しいですよね。

金属

金属というと重々しい感じもしますが、これがまた秀逸な酒器になるのです。注目されるのは錫が多いでしょうが、他にもチタン、ステンレス、純銅などがあります。

まず手に入れて損がないのが、錫なんです。錫はアルコール醸造時に生成される揮発成分・フーゼル油を溶かす作用があるうえに、優れた浄化作用により、酒の雑味が抜けて、まろやかでキレイな味にしてくれます。

もちろん合わせる日本酒にもよります。酸の強めなお酒などは、その酸の良さが逆に引き立つような味にもなるのです。

金属の酒器ならではの醍醐味。

また、錫も純銅も金属は熱伝導率も高いため、熱いものは熱く、冷たいものは冷たいまま楽しむことができます。

家にステンレスと純銅のビールグラスがあるのですが、夏は冷たいビールを飲むのに大活躍しますし、冷酒にも熱燗にも合わせることのできる錫のぐい呑みもなくてはなりません。

季節や使い勝手を選ばない金属の酒器は、お蕎麦や和洋折衷のお料理の時などに合わせてみるのも、また雰囲気が違って楽しいかも知れません。

酒器の形によって変わる日本酒の旨さ。

一口に酒器の形状といっても、細かく比べると種類は豊富です。

そこで実際に、家にある形が違い、素材の違う(ガラスと陶器)酒器で飲み比べてみました!

ワイングラスとラッパ型。

まず、よく聞くのが、ワイングラスのような湾曲性のある酒器は、大吟醸や吟醸酒のような香りが華やかな日本酒を注ぐと、その香りを充分に楽しむことができるということです。

加えて、ラッパ型と呼ばれるような、口が上に向かって広がっているようなグラスも日本酒のフルーティな香りを引き出してくれるのですね。ガラス素材の酒器がイメージしやすいでしょうか。

確かにラッパ型は香りが立って華やかに感じますが、日本酒の重み・味わいをしっかり感じさせてくれるように思いました。そしてガラスよりも陶器の方がやわらかだったように感じます。

日本酒はスッキリ呑みたいという方へ。

また、円筒形のほぼストレートの酒器になると、口をつけて流し込む時に、口径が狭いため香りが広がりにくく、その日本酒の味わいがそのまま運ばれてくることによりスッキリと呑むことができるといわれています。

こちらも酒器に口をつけると香りは広がらず、直接、舌までお酒がくるので、10年物の古酒で試したのですが、ものすごくスッキリ呑むことができました。古酒の個性を味わいたい時には物足りませんが、ちょっと重いなぁと感じるようなら、このストレートの酒器を使うのもひとつの手かも知れませんね。

日本酒のふくよかさを味わいたい方へ。

そして、口径がストレートと同じように狭く、下の方が膨らんでいるような酒器は、日本酒がもつ香りや風合いを包み込み、芳醇な旨味を引き立ててくれるそうです。

これは、酒器の中で香りが広がり、こもっているような状態から口に含むので、香りも味わいも丁度よく感じられました。ただ、比べた4種の中で一番、酸味が強く感じられたのですが、呑み進めるととても味わい深く、もっとも今回の古酒の個性に合っていた酒器だなぁという所に落ち着きました。

日本酒の濃厚さを思い切り味わいたい方へ。

さらに、程よく口径があり、腰が張っているような酒器は、口径の狭いものよりも日本酒の味わいを濃厚に感じ、旨みや甘みなどをしっかりと長く感じられるといわれています。

これは、陶器では古酒の濃厚さを存分に感じる呑み口だったのですが、ガラスだと少し形状の違いもあり、逆に香りも味わいもやわらかく、やさしい感じがしたのですね。

陶器とガラスを4種づつ揃えて、ほぼ形を合わせて比べてみたのですが、正直、全部違う笑

確かに形状ごとに感じる傾向はあるかも知れませんが、呑む日本酒と合わせる酒器で楽しみ方は無限大だということがわかりました!

まとめ。

日本酒の数だけ個性が存在するように、酒器にもまた様々な個性があるということを、改めて感じますよね。土地の個性、作家さんの個性など、ひとつとして全く同じものは存在しないかも知れません。

日本酒同様、ぴたりと寄り添える自分だけの酒器に出会えたら面白いですよね。

その土地を訪ね、旨い日本酒を見つけ、その土地の酒器を土産にして帰る。きっと相性抜群なはずです。家に帰っても旅気分。最高じゃないですか。

そして、昨今の家呑み万歳なご時世には、ちょうど良い遊び方ができますよね。なぜなら、ちょっと寂しいけれどネットでも買える時代だからです。

酒器でその日の日本酒を遊べるということは、その時の自分が楽しいと思う気分と空間をオリジナルで作ることができますよね。まさに酒呑みは総合エンターテイメント!

ぜひ、お気に入りの酒器で、自分と日本酒をしみじみ楽しんじゃいましょう。

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