日本酒の甘口・辛口の違いを見極める方法!
結論から言いますと、無いに等しい・・・のではないでしょうか。
えっ、よく淡麗辛口とか聞くじゃありませんか。とか、お店で日本酒を買ったり、居酒屋で注文の時も出てくるワードではないですか。と思われるかも知れませんが、実は日本酒の甘口・辛口を一般化して判断するのは、言われたお店の人たちにも難しいことだと私は思います。
しかし、「どんなタイプがお好みでしょうか?」と聞かれたら、つい「辛口が好きです」とか「甘口なら少し飲めます」とか、普通に答えてしまいますよね。
それなのに、甘口・辛口の違いを見極める方法が無いに等しいってなぜだと思われますか?
日本酒を甘口・辛口で判断できない理由
一般的に「甘い」というイメージは、砂糖などを使ったお菓子やパン、果物などを思い出します。お口が甘いひと時は、幸せも運んでくれますよね。
そして、甘いものを食べる=太るとか、罪悪感なんかも余分に感じてしまったり、ちょっと中毒性を感じて我慢できなくなったりと、夢中になってしまうことがあります。それ以外にも、ご飯を口にいれてよく噛んでると甘みを感じますよね。
甘いと辛いの正体を探る。
「甘い」を調べてみると、
1,砂糖や蜜(みつ)のような味である。 2,塩けが少ない。辛くない。 3,口当たりが穏やかで、刺激が少ない。酒の味などにいう。 出典:デジタル大辞泉(小学館) |
とあります。
では、「辛い」のイメージはどうかと言うと、ワサビやからし、山椒、唐辛子などピリリからツーンまで幅や種類が多いなぁと思い浮かびます。辛いの大好きを公言する方も多いですし、刺身やつまみのアクセントとして、日本酒をクッと流し込むには必需品ですよね。
余談ですが、私は、昨今の激辛ブームを思い出します。みなさん、食べた翌日のお尻は無事なのか、いつも心配してTVを見てしまいます。余計なお世話ですが、皆様のご無事をお祈り申し上げます。
「辛い」を調べてみると、
1,トウガラシ・ワサビなどのように、舌やのどを強く刺激するような味である。
2,塩気が多い。しょっぱい。 3,甘みが少なくさっぱりとしていて、ひきしまっている。酒の味などにいう。 出典:デジタル大辞泉(小学館) |
とあります。
「甘い」も「辛い」も3番は適してそうに思います。
ところがです。
感じ方の違いで甘辛が左右される話。
以前、とあるお酒の講習を受けた際の実験で、全員、同じように提供されたものを飲んだのですが驚きました!そのお酒を甘いと答えたのが半分、辛いと答えたのが半分と意見が分かれたのです。もう一度別のもので試した時も同じような結果になりました。
それだけ、一本の日本酒に、全国酒呑み民が一致して甘いか辛いか、を決めつけることは出来ないということが言えるのではないでしょうか。
日本酒度だけでは測れない理由
日本酒度というのは、酒瓶のラベルに原材料やアルコール度数と共に書かれている、甘辛の目安となる数値のことです。本来、私たち消費者が判断するものではなく、醸造の過程で使用されます。お酒に浮秤という日本酒度計を浮かべて、水を0とし、比重が重いか、軽いかを計り、発酵度合いを見極めるのに用いるためのものです。
プラスとマイナスの違いを知る。
ちなみに重いと糖分が多いので「甘口」の−(マイナス)、軽いと糖分が少ないので「辛口」の+(プラス)と表記されています。
数字で見られるのだから、わかりやすいじゃないっ。と思われるかも知れませんが、甘さ・辛さの比重はわかりますが、口に含んで感じる複雑な日本酒の味わいまでは折り込まれていないので、それだけで判断することは難しいのです。
簡単に言うと、日本酒はお米を糖化させて、その糖分をアルコールにしています。独特な味わいの特徴は、「甘み」と「旨味」。そして、すべての日本酒が甘みを持っていると言われています。
そこに、酸味や苦味、香りなどが加われば、さらに複雑なものとなり、単純に甘口・辛口という判断は迷宮入りしてしまうのです。
ですので、日本酒度という数字だけでは、酒本来の奥深さを計る事ができないのです。
酸味や香りだけでは測れないという楽しさ
酸味と聞くと酸っぱいとか梅干しを連想しますが、日本酒では「酸度」という酸の量を数値で示すものがあります。酸の含有は主に、乳酸やコハク酸、りんご酸などでそれによっても味わいは変わってきます。あくまでも目安ではありますが、酸度が高いと辛いと感じ、酸度が低いと甘いと感じると言われています。
同じように「アミノ酸度」がありますが、これは旨味やコクを生み出すアミノ酸の量を示すものです。アミノ酸が多すぎると雑味になってしまうそうです。
香り成分が導く味わいの違い。
そして、吟醸香といわれるフルーツのような華やかな香りを感じる事がありますよね。酵母の特性により、発酵中に生み出される成分があります。それが、りんごのような香りのカプロン酸エチルとバナナのような香りの酢酸イソアミルアルです。
香りを嗅いだイメージとして、りんごやバナナのようなフルーツの香り=甘いと感じやすいですよね。
どうしてお米からお酒を作る間に、フルーツの香りがしてくるのかとても興味深いですが、呑助としては、正装して挑みたい高貴な香りであり、自分が上品になったと錯覚するような、とてもええ気分な時間を頂いている香りでございます。
数字と感覚の関係が興味深い理由。
まとめてみますと、日本酒度がマイナスで、酸度が低く、アミノ酸度が高めで、吟醸香が薫る日本酒は甘いと感じやすのではないかと言えそうです。あくまでも言えそうだという推測です。
ここで少し戻って思い出していただきたいのが、講習の実験結果です。もしかしたら、数値で選んだ甘いと思われる日本酒を何人かで比べたら、甘い・辛いで意見が分かれるのかもしれません。
自分の感覚を楽しむ時間。
つい先日、私は「大辛口純米酒」と書かれた日本酒をいただいたのですが、穏やかな米の旨味は感じましたが、甘さも感じました。パートナーも開口一番「甘いね」とのこと。
辛口の純米酒ということなので、お燗にしても良いなぁと思い、熱燗にしてみると飲み口最後に甘みが来る。なので、自分としては「甘口」だなと思ってしまったのです。これはこれで、面白い経験でしたし、個性を感じてひと瓶いただきました。
ですので、日本酒度だけでなく酸度、アミノ酸度、香りなどが絡み合った結果、より「甘口」「辛口」を見極めるのは難しくなったといえるでしょう。
まとめ
日本酒はひとくち含んでも、それぞれの物語があります。甘い香りを感じながら、米のふくよかさを感じてスッキリ抜けていくとか、どっしりとした米の旨みから、酸を感じつつアルコールの余韻を残す、とか起承転結を感じられるのが味わい方だと思います。2杯目はまた違う感じがしたり、温度、食事、器でも変化を楽しんでいける飲み物です。
そして、日本酒は「甘み」「旨み」「香り」「酸」「コク」などが複雑に絡み合った、その時出来上がる、奇跡的な飲み物なので、万人の舌を通して「甘口」「辛口」を判断するような枠には納まらないと、私は思うのです。
人の味覚は人の数だけあり、人の数だけ、日本酒の味わい方がある。それが面白いところですよね。
ただ、私はいつも「生原酒」とか「純米」、「山廃」などの好みのワードの日本酒ばかり買ってきてしまうので比べた事がないのですが、今度、日本酒度や酸度などが書かれているお酒を、その数値違いで、自分がどんな風に感じるのか、飲み比べてみるのも面白いかも知れませんね。
様々な数値は、あくまでも目安にして楽しむのは良いと思います。
あとは自分を信じて、色々試しながら、自分にあった「これぞ!」の日本酒を探していくのが楽しいのではないでしょうか。皆様の良き1本が見つかりますように!
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