さて、上巻からの続きです。時代に揉まれながら、着々と日本酒としての歩みを感じさせるページとなっています。
学ぶことの楽しさと引き換えに、睡眠不足には気を付けたいものです。そんな時は、日本酒を呑んでリフレッシュでしょうか^_^。
蔵人たちの魂と戦国の世。
戦国の時代は、各地域の大名たちが果敢な勢力争いを繰り広げ、それぞれ独自の文化が生み出されていきました。多くの犠牲の上に成り立っている歴史の深さを感じますね。
遠方との流通が新しい文化を生み出します。
ここからの日本酒が面白いんです!地方で生まれた蔵人魂(勝手な妄想)に火がついたように、文化と共に地酒が盛り上がりを見せてまいります。田舎酒と呼ばれていた地方の酒が、京にまで流通されるようになったのです。
中でも古くから親しまれていた「西宮の旨酒」、天下の美酒「加賀の菊酒」、近年復活した「伊豆の江川酒」、幻の酒「河内の平野酒」、もち米で仕込む「博多の練貫酒」など、個性溢れる面々が名を連ねていたようです。今どのように味わえるのか興味津々です!
悲しいこともあれば、良いこともある。
その後、様々な銘醸地が誕生する中、織田信長の存在により、隆盛を誇った僧坊酒が影を潜めていきます。そして反比例するように、楽市楽座による地域商売の活性化、遠方への流通など垣根を超えた繋がりが広まることで酒の文化が花開いていくのです。
酒造りと税金の戦いが始まる。
これまで米と税金は切っても切れぬ間柄でしたが、江戸時代に入り、大量の米を扱う酒造りにも税金がかかるようになります。同時に、今で云う酒造免許の制度(酒株制度)も始まりました。
米の取れ高が多かったら「酒を造って良いよ、新参者も今年は良いよ」、少なかったら「造るの控えてね」というなかなかヘビーな約束事でした。
昔、昔より禁酒令は当たり前のようにあった。
実は、ヘビーなのはこれだけではありません。口噛み酒の後より、恐ろしい禁酒令なるものが、近年に至るまで幾度となく発令されているのです。
お酒で争い事が増えてしまったり、仕事に身が入らなくなってしまったりと理由は様々なようですが、あまりに寂しいじゃありませんか。ちゃんと自分を律するように心掛けますから(涙)
寒造りや杜氏の存在が根付いてゆく。
様々な政策に振り回されながらも、日本酒の歴史は途絶えることなく続きます!
寒造りの物語。
一年中造られていた日本酒が、今の寒造りスタイルに統一されていったのが江戸時代に入ってからです。前述の菩提泉も夏に造ることが出来ましたよね。同時期に、天野山金剛寺の天野酒というお酒があり、寒造りがベースであったとされています。
寒造りのメリットは、農閑期の農民や漁村からの人材を確保しやすく、さらに寒い時期の仕込みの方が酒造りに適していたからだと云われています。歴史を重ねて、ベストな造り方に集約されていくのですね。他にも、憧れでもある杜氏制度の確立もこの時代に行われています。
杜氏というプロフェッショナル。
伊丹や池田を代表とする造り酒屋で、技術を磨いた杜氏・蔵人が各地の蔵に呼ばれました。技術を伝えることで、風土に合わせた酒造りに貢献していったのです。南部杜氏や丹波杜氏など、それぞれの集団組織を形成し、独自の酒造りを伝承し今日に至ります。
今ある醸造方法のベースがいくつも試され、灰を使って酸味を調整したり、仕込み方や精米歩合の向上など味わい・仕上がりの追求が行われていました。やはり、日本人の美学。美味しいものへの飽くなき探究心というところでしょうか。
庶民にも広がるお酒の文化。
またこの時、時代劇でも見られるように、料理茶屋を利用したり、気軽に酒を飲めるような居酒屋が生まれたりとお武家様のみならず、庶民も飲酒ができるようになりました。万年庶民の私としても、ようやく見られた陽の目が喜ばしい限りです。
身体にやさしいお酒との付き合い方。
ここで「養生訓」の作者である儒学者・貝原益軒が登場してまいります。
酒は天の美禄という言葉がある。少し飲めば陽気を補助し、血気をやわらげ、食気をめぐらし、愁いをとり去り、興をおこしてたいへん役にたつ。
またたくさん飲むと酒ほど人を害するものはほかにない。
※美禄とは良い授かりものという意味です。
参考:「養生訓」貝原益軒/松田道雄訳
全体的な内容として、天と人との身体の繋がりを感じ、外的要因や精神的内面を意識して生きていけば長生きできるよ。ということを、実践や体験に基づく方法で伝えてくれているのかな。と思いました。
日本酒を庶民も口にできるようになり、飲み方や食べ合わせ方、生活スタイルで病気を減らしていけるんだと、多くの方に伝えたかったのかも知れませんね。
今後も、良いお付き合いを望んでまいります。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
土地の歴史や時代背景を学ぶことで、ラベルに書かれた名前の意味を、改めて深く考えさせられることに気づきました!また、日本酒を見る目が変わって楽しいですね。
この続きは下巻で書いていきたいと思います。↓
参考:奈良県菩提元による清酒製造研究会(菩提研)/国税庁/ 独立行政法人酒類総合研究所/株式会社サタケ「酒造りと酒造精米の歴史」/滋賀大学経済学部/エネルギー・文化研究所(大阪ガスネットワーク)/J-Stage/大浦春堂「神様が宿る御神酒」
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