酒瓶のラベルによく記載されている精米歩合という言葉。70%だったり、50%だったり、あるいは23%と書かれている日本酒もありますよね。
初心者の私は、はて?何のことやら‥と数字の意味することが分かりませんでした。その内に調べてみて、お米の削り具合をいうんだなと認識しましたが、数字が大きいのと小さいのどちらがどう良いのかまでは理解するのに時間を要したんです涙。
そんな特訓時代を思い返しつつ、より分かりやすく自分の中に落とし込めるよう精米歩合について学んでみたいと思います!
謎の精米歩合という言葉を知る。
そもそも精米歩合とは何だろう?となります。ほとんどの酒瓶ラベルにこの文字が見られますよね。
精米歩合とは、白米の玄米に対する重量の割合をいいます。つまり、精米歩合60%とは、玄米の表層部を40%削ることをいいます。〜省略〜
ちなみに、家庭で食べている米は、精米歩合が92%程度の白米ですが、清酒の原料とする米は一般的に精米歩合が75%以下の白米が用いられています。
参考:国税庁
つまり、精米歩合70%とすると、一粒一粒のお米のうち30%の糠を落として70%の米を酒造りに使用していますよ。ということになります。
そんな方はいらっしゃらないと思いますが、お米のコスプレをしたとして、10枚の白いパンツを重ね着している人が3枚脱いだ計算ですね。
特定名称で定められた分類に当てはめてみる。
ここで思い出したいのが、特定名称の基準です。大吟醸や本醸造など、どれを選べば良いのか迷うくらい様々な呼び名を目にしますよね。清酒の製法品質表示基準の規定により、精米歩合や使用原料によって付けられる呼び方が決められているんです。
本醸造は精米歩合70%以下、吟醸・純米吟醸や特別純米酒・特別本醸造は60%以下、大吟醸・純米大吟醸は50%以下となっております。ちなみに純米酒は規定がありませんので、様々な精米歩合を楽しめます。
数字のマジックに翻弄されてみる。
「吟醸」とか「大吟醸」とか酒瓶に書かれている文字と合わせて、ラベルの精米歩合をチェックしてみると面白いかも知れません。
精米歩合の数字が低くてプレミア感がある!とか、すごく綺麗なのに精米歩合の数字が高いなぁとか数字の差が気になり始めます。いらっしゃいませ。もう、沼から出られなくなるでしょう。
ただし、数字だけに惑わされては、蔵の目指す酒造りや、折角のお酒の個性を見失ってしまいます。精米歩合の数字に込められた熱い想いを受け止めつつ、じっくりと味わいたいものです。
米を削ることの仕組み。
話を元に戻します。私たちは、日本人としてお米を食べる機会が多いですよね。炊き立てご飯に生卵とお醤油。なぜか、今日もありがとう‥。という言葉が出てきそうなくらい美味しくいただけます。
先ほどの説明だと飯米の精米歩合は92%程度。米の品種の違いもありますが、日本酒を造るためには大吟醸だと半分くらいお米を削るということですよね。
米粒一つ残したらいかん!の世代としては、なかなかシビアな現実を目の当たりにしました。もちろん、削られた糠部分は食品などの加工に使われています。
美味しいお酒ができる理由。
しかしながら、これはとても大切な理由があります。繊細な日本酒の味を造りだすためには米をいかに美しく削るかということが重要なのです。
玄米が持つ栄養の力。
玄米菜食という言葉があるように、玄米食は身体のバランスを整えてくれるほど栄養価の高い食品です。
体内での合成が難しいビタミンB群をはじめ、塩分の摂りすぎを調整するカリウムや、歯や骨の形成に役立つカルシウム・血圧や体温の調整に必要なマグネシウムなど、多様なミネラルが豊富に含まれています。
その他にも米の成分として挙げられるのがタンパク質や炭水化物・脂質です。これらの大事な栄養素が糠の部分に多く含まれ過ぎるがゆえ、香りや味わいを崩してしまう理由になってしまうのです。残念ながら、いわゆる雑味と表現されています‥。
米の磨き具合で味に違いが出る。
お米を削ることを磨くといいますが、磨きすぎても膨らまない味になり、磨かなすぎても美味しい日本酒にたどり着かない。酒蔵さんの悩ましい現実を突きつけられるような思いです。
ちなみに、大吟醸のように精米歩合の数字が低いお酒は、すっきりと綺麗な味わいとなり、精米歩合の数字が高いお酒は芳醇な旨みや複雑味を楽しめる味わいと云われています。造り手が思い描く酒質が、精米歩合の数字一つとっても、表現の一部として垣間見ることができるんですね。
米を磨きに磨いたお酒の魅力を知る。
以前は、淡麗辛口ブームといわれた時期もあり、冷酒で呑みやすいすっきりとした味わいが人気を博した時代がありました。もちろん、今でも喜ばれますし、ワインのような感覚でサラッと呑めてしまうのが好きな方も多くいらっしゃいます。
研ぎ澄まされた美しい味わい。精米歩合の数字の低い日本酒が数多く出現しており、これもまた技術力の高さが必要な一つの挑戦だと受け止めています。
磨きすぎるデメリットがある。
なぜなら、米を削りすぎることで、酒造りに必要な栄養分まで削ぎ落としてしまう可能性もあるからです。
特にカリウムやマグネシウムなどのミネラルが不足すると、十分なアルコール発酵が進まなくなる恐れがあります。発酵が不十分だと、心地の良いふくよかな旨みが生まれにくくなるのです。
日本酒にとって米の旨味やバランスは重要な要素。加えて、お米をたくさん削ることはそれだけ精米に時間を費やし、小さくなったお米の量も必要となるためコストが掛かるのも事実です。
精米歩合の数字の低いお酒が、手軽に美味しいなぁと楽しめるのは素晴らしいことでもあります。
時代の流れを感じさせる低精白のお酒。
少し混同して頭がパニックになりそうですが、精白率という言葉があります。精米歩合の意味と比べると、精米歩合70%=精白率30%なんです。30%削りましたよ、という素直な表現です。ここで、新たな言葉が現れます。
低精白というワードを耳にする機会が増えているかも知れません。精白率が低い、つまり精米歩合の数字の高い日本酒が注目を集めており、色んな酒蔵の様々なタイプを味わえるようになりました。
低精白の難しさと技術革新のありがたみ。
磨きの少ないお米を通常の造り方で醸すと、期待できる結果を得るのは難しいと云われていました。低精白では、お米が溶けにくかったり、発酵が進みすぎて調整が難しかったりとその課題に対応できる高い技術が求められるからです。
ところが、特定名称酒の規定でいう70%以下の常識が次々に変化し、精米歩合80%や90%などの多様な日本酒がお目見えしています。
以前、頂戴した天の戸・美稲80は、色んな味が複雑に絡み合っているのにバランスが取れていて呑みやすいという不思議な感覚を味わいました。美味しいんです。
これまでの磨けば磨くほど、綺麗なお酒が造れるという概念から、蔵ごとの技術力や方向性で磨きが少なくても旨い酒が造れるんだ。というメッセージに変わってきているように思います。
精米方法の違いが味の違いをもたらす理由。
店頭でラベルを見ていると、もう一つ気になるワードを見かけます。扁平精米と云われる精米方法の違いです。従来の精米方法ではお米が丸く削られるため、必要なタンパク質が削られ、雑味になる不要な部分が残ってしまうという状態でした。
扁平精米では、お米一粒を同じ厚さで均等に削ることにより、精米歩合が高くても高精白のお酒のような綺麗な味わいを造れるようになるのです。実際、精米歩合55%のお米に含まれる粗タンパクの分量が、通常精米35%と同じであるという分析試験の結果があります。
えっ。味わいが変わるんですか?
また、アミノ酸度が低くなるとも云われており、その分飲み口がキレイでスッキリしたタイプになるんですね。ただし、精米中のお米が割れやすいという難しさもあり、常に知恵と工夫が求められているように感じます。
低精白や扁平精米などの日本酒は、お米を大事に使いたい、コストを削減して求めやすい価格に反映したいという熱意も感じられる方法の一つです。本当に良い時代に生まれたなぁと自分の運の良さに感謝したいくらいです。
まとめ。
呑み手としては、さらに日本酒選びが楽しくなる!という有難い流れを感じております。自分の好みの味わいや酒蔵さんの特徴を舌で感じながら、日本酒色に染まっていくのも良いですよね。
精米歩合で選んだお酒を、冷なり熱燗なりでバリエーションをつけて楽しむのも一つです。
全国の呑み助たちが健康的に日本酒を呑み続ける限り、これからも楽しいお酒が山ほど出てくるかも知れません。いやぁ、たまりませんね笑。
参照:J-Stage/広島県食品工業技術センター
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