日本酒は大好き。いつでも呑んでいたい。けれど呑んで楽しんでしまえば、目の前には空の冷蔵庫。そして給料前。寂しすぎる・・・。
そんな時の強い味方が、お手軽1000円で楽しめてしまう、コスパの高い日本酒たちの存在です。消費者の勝手な願望ですが、お手軽値段でもお値段以上を求めてしまう悪いクセがあるのも事実。
それを受け止めてくれる、心やさしい1000円の日本酒たちは、まさに神。
しばし、降臨していただきましょう。
1、喜久酔 特別本醸造 1100円
精米歩合60%
藤枝市にある青島酒造株式会社の喜久酔・特別本醸造です。酔という字は、正式には旧字を使用しています。
雑誌などでも紹介され、全国的にも有名な喜久酔です。青島専務はアメリカの証券会社で働いたのち、日本の文化の素晴らしさに気づき、家業を継ぐため30代で、醸造家として一からスタートされたそうなんです。
その意気込み、魂が込められた酒造りの結晶が、喜久酔に凝縮されているのですね。さらに酒造りのシーズンが終われば、自ら米作りに参加し、汗を流し、米を育てる。そして、その田んぼと同じ、南アルプスの伏流水を使用して日本酒を仕込んでいるとのこと。
その米と水の相性のせいか、とても綺麗で、クリアな、華やかさも感じる味わいでした。食中酒としても抜群の呑みやすさを感じ、コストパフォーマンス高めの見事な存在感でした。
本醸造を知るということ。
私は、疲れている時に、醸造アルコールを添加された日本酒を呑むと、頭が痛くなったり、変に酔いがまわることがあり、少々、苦手意識があったのですが、これはただただ美味しくいただけました。今まで少し距離を置いていた本醸造でも、美味しく呑めるものがあるんだとカルチャーショックを受けたくらいです。
無知な私に、先入観はいけないよと教えてくれた、素晴らしい逸品でした。
おすすめの呑み方。
とてもキレイな呑みやすいお酒だったので、冷や(ここでは常温)か少し冷たくしてスッキリといただくのがおすすめです。もちろん自分好みで燗にしてもらうのも良いかもしれません。米の味わいもあるので、これから春に向けて山菜の天ぷらなどの油物も受けとめてくれます。
2、旨醇 天狗舞 1100円
精米歩合60% 純米酒 五百万石使用
石川県白山市にある車多酒造の旨醇・天狗舞です。
私が大好きな日本酒で、お手軽さもあり、リピートしています。もちろん、全国的に有名な美味しさですよね。こちらは文政6年創業と大変に歴史のある酒蔵さんです。丁寧な手造りにこだわり、山廃仕込みに力を入れています。
山廃仕込みとは、山卸し作業を廃止=山廃で仕込んでいるということです。流れを説明すると、米と水をアルコールに変えて日本酒にするためにとても大事な酒母(酛)を造る際、米の糖化を早めるため、蒸し米を櫂といわれる棒で摺り潰していました。
これを山卸し(酛摺り)というのですが、非常に重労働な上に、実験の結果、酒母の成分的な違いは見られず、特に必要のない作業ということがわかったのです。
昔から「櫂でつぶすな、麹で溶かせ」という言葉があり、それを体現するかのように山卸しは廃止されたのです。酵母を育てる自然のはたらきを信じることが大切なんですね。
山廃仕込みのお味は・・・。
山廃仕込みの日本酒、そして山卸し作業を行っている生酛仕込みの日本酒の特徴は、自然界の乳酸菌を取り込んで、じっくり時間をかけて酵母を育成するため、速醸酛といわれる醸造用乳酸を加えて素早く蒸米を溶かして造る日本酒よりも、濃醇な味わいの日本酒になるということです。
こちらの旨醇・天狗舞は山廃仕込とはラベルになかったのでわかりませんが、蔵で熟成してから瓶詰めされているとのことで、しっかりと黄色く色づき、口に含めば酸、旨味、米の力強さを感じられ、まさに旨醇なお味なのです。
おすすめの呑み方。
冷や(常温)でよし、ぬる燗(40℃)でよし、おつまみも選ばない食中酒にもってこいの逸品です。特にぬる燗では、味わいがまろやかになるのでお勧めしたいところです。ぬる燗にしても旨味、酸味もありますので、あん肝などと合わせても濃厚なお味がさっぱりいただけるかも知れませんね。
3、花の舞 純米しぼりたて 新酒 冬季限定 1100円
精米歩合60% 純米酒 アルコール度数18度 静岡県産米使用
浜松市にある花の舞酒造の純米しぼりたてです。
初めて購入したのですが、そのフレッシュな香り、味わいと米のふくよかさのバランスが絶妙で、このお値段にびっくりしてしまいました。花の舞さんは大衆的なお値段のものも多く、どこでも見かけることが出来るのですが、からっ風など酒の会が催されるほど根強い人気のお酒もあり、いろんな表情を持ち合わせているなぁと感じています。
花の舞がこだわると・・・。
こちらでは、地元農家が育てる静岡産山田錦を使用し、南アルプス石赤系の地下水を存分に使い、社内で育てた杜氏とともに、まさにオール静岡の本物の地酒づくりにこだわっています。
海外向けブランドとして「日本刀(KATANA)」1100円も逆輸入と謳われ、お見かけすることがあります。こちらはクセのないスッキリした味わいで、海外を意識されて造られたことが伝わります。
ですが、やはり日本にいるなら純米しぼりたてを手に入れたいところです。しっかりとした米の味を感じつつ、すっきりとキレの良さもある、とてもコスパの高い逸品であるといえます。そのままでも、食中酒でも素晴らしい時間が過ごせますよ。
おすすめの呑み方。
特にお酒だけ飲むようでしたら、フレッシュな香りを素直にいただくのに、冷やか少し冷たくしていただくのがおすすめです。もちろん、米のふくよかな味わいもあるので、マグロの頭肉を漬けにして焼いたような、油を感じるおつまみもキレイに流してくれます。
4、特別本醸造 正雪 1100円
精米歩合60% 山田錦・静岡酵母使用 日本酒度+4 酸度1.2
静岡市清水区由比にある神沢川酒造場の特別本醸造・正雪です。
東海道五十三次16番目の宿場町「由比」に構える酒蔵で、林業と養蚕業を営む親子が、酒好きが高じて大正元年に創業したという、とても熱意と親しみを感じる蔵元であります。また、酒造りの理想を追求するため、適した水を探し求めてこの神沢川の柔らかな水にたどり着いたそうです。
軟水を使用すると難しくなる理由。
軟水を使用するということは、ミネラル分が少なく、ごまかしがきかないため、酒の良し悪しがストレートに出てしまうとのこと。そこで、蔵人は五感を駆使し、必要なだけ手を加え、手間を惜しまず酒造りに集中されているそうです。
こちらの特別本醸造・正雪もその想いが凝縮されている逸品であると思います。とにかく香りや程よい甘さが華やかで、口に含むと柔らかく、また酸味、苦味も感じる。気づけば、いつの間にか呑み進めてしまいそうな味わいです。そして、ぬる燗がちょうど良く、旨さがさらに引き立てられます。
神沢川の柔らかな水のように、嘘偽りのない、心にも懐にもやさしい日本酒です。
おすすめの呑み方。
とても柔らかくやさしいお味なので、ぬる燗にしても、お酒とお料理とがお互い胃に染みるような、湯豆腐とかあさりの酒蒸しなどあっさりしたおつまみが合わせやすいかもしれませんね。
5、純米酒 君盃75 962円
精米歩合75% 純米酒 日本晴(滋賀県減農米)使用 日本酒度1.0 酸度1.3
静岡市駿河区手越にある君盃酒造の純米・君盃75です。
少し琥珀色があり、香りも古酒や山廃系かと思わせるが、口に含むと甘みを感じ、その後はやわらかく口に馴染む。ぬる燗にしても、やわらかさを保ち、とても呑みご心地の良いまとまりがある。正直、このお値段では申し訳ないくらいです。
思い入れがあるのは、直接蔵元に買いに行った際、対応してくださった方が息子さんだろうか。とても気さくで、このお酒をスクリュードライバーのように、氷を入れて、オレンジジュースで1:1で割ると美味しいんだと動画を見せながら解説してくれたんです。
実際にやってみたら、確かにうまい。ただ、ジュースのようにぐいぐい呑んでしまう危険な飲み物ではありましたので、要注意です。
君盃が歩んだ道。
こちらは、今は閉じてしまった満寿一酒造から枝分かれした安政3年創業の蔵なんです。ただし、戦時中は静岡共同醸造組合に統合され、第二次世界大戦末期の静岡空襲で唯一残った酒蔵で、戦後に酒造りを再開したため、公式の創業年は昭和25年となっています。
清流として有名な安倍川の伏流水を使い、父と息子の二人で丁寧に醸すお酒は、私が感じたやさしい味わいそのままのようなお人柄も相まって、心地の良い逸品です。
おすすめの呑み方。
やはりおすすめは、ぬる燗でしょうか。ぬる燗にしてみるとやわらかさを保ち、スイスイ呑み進めてしまいます。熟したような深い香りもあるのですが、元々のやわらかさもあるので、ふろふき大根や蒸し牡蠣なども合わせてみるのも楽しいかもしれません。
まとめ。
日本酒の世界は、安いからそれなりとか高いからめっちゃ旨いとか、そういう単純な世界ではないところに、おもしろみと凄みを感じるのです。
今日のこの一杯のために、お財布に優しくしてくれてありがとう、と心から感謝していただきたいですよね。うーん、幸せだなぁ。
ここには載らなかった、私の知らないお手軽日本酒は、まだまだ山のようにあると思います。皆さんがいる、その場所のお手軽日本酒が「ここにいるよ」と酒屋さんで待っているかもしれません。
ふとした時に出会えるかもしれないので、これからを楽しみに呑み続けたいですよね。
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